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無農薬野菜が必ずしも体に良いとは限らない

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今村まさふみ 『30代からのリバウンンドしない体づくり』をコンセプトに渋谷・代官山でパーソナルトレーニングを行っている。科学的根拠に基づいたプログラムを作成し、多くのお客様から支持を得ている。 詳しいプロフィールはこちら

 

渋谷、代官山、新宿で活動しているLife Style Proposer パーソナルトレーナーの今村です。

今回は、無農薬野菜が必ずしも体に良いとは限らないと言うこと、食と進化(環境適応)にはそれなりの相関関係がある、と言うお話をしていきたいと思います。

 

 

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そら豆中毒

 

古代ギリシャのピタゴラスは、門下の学生達に「そら豆は食べるな」と警告したと言われています。

 

古代ギリシャの秘教の一つ、オルペウス教の信者達はそら豆には生命と死が入っていると考えていた。

 

アリストテレスはピタゴラスのそら豆嫌いについて次のように述べた。

 

そら豆の形が睾丸に似ている。

地獄への門に似ている。

そら豆は腐りやすい。

宇宙全体の本質に似ている。

投票に使うから独裁政治を思い起こさせる。

 

そら豆中毒症(遺伝子欠損により引き起こされる溶血性の中毒症状)は、世界で最も広まっている酵素欠損症(G6PDが少ない)で、4億人もの人がこの遺伝子を持っていると言われています。

 

 

活性酵素

科学者達が特定の人たちの赤血球が破裂すると言う症状に注目し始めたのは、朝鮮戦争(1950年〜1953年)の時だそうです。

 

きっかけは、

一部の兵士が「プリマキン」というマラリアの薬に危険な反応をしたことだと言われています。

 

アフリカ系アメリカ人の10%が貧血を起こし、特に地中海沿岸に祖先を持つ兵士の中に、赤血球細胞が破裂するという溶血性貧血と診断されました。

 

戦争が休戦(朝鮮半島は今でも戦争状態ということになっている)に入った後、1956年になってその原因が突き止められました。

 

その兵士達の細胞の中には、G6PD(ブドウ糖-6-リン酸脱水素酵素)という普通の人なら持っているはずの酵素がもともとなかったことが原因でした。

 

この酵素は細胞間の結束を強め、細胞を破壊しようとする化学物質から守る働きがあり、特に赤血球にとっては重要な酵素です

 

ところで、皆さんはフリーラジカル(ついになる電子を持たない原子や分子)をご存知でしょか?

 

おそらくどこかで耳にしたことがあるワードだと思いますが、これが老化の原因やがんの原因になると言われています。

 

対になっていないので、常に相方を求めて細胞間を彷徨います。

 

その結果、場違いな場所で化学的に妙な反応を起こしてしまうので、細胞内の化学バランスを崩してしまいます。

 

フリーラジカルと似た作用を持つものに活性酸素があります。

 

詳しい説明は割愛しますが、活性酸素とフリーラジカルは違います。

 

活性酸素の中には、過酸化水素や一重項酸素といった比較的安定したものもあるため、全てがフリーラジカルというわけではありません。

 

そして前述のG6PDは活性酸素が赤血球に危害を加えるのをボディーガードのように防ぎます

 

ところがG6PDがないと、赤血球細胞を守るものがないので大変なことになってしまいます

 

それが赤血球細胞が破裂するという溶血性貧血です。

 

これが、プリマキンにひどい反応を起こした兵士の体の中で起こったことです。

 

プリマキンも赤血球細胞のバランスを崩し、マラリアの侵入を防ぎます(プリマキンは体内で活性酸素を発生させ、その作用によりマラリア原虫のガメトサイトを死滅させる)。

 

G6PDが少ないと、赤血球細胞はそれに耐えられないため、細胞膜が破裂し、破壊されてしまいます。

 

そら豆再び

話をそら豆に戻します。

 

そら豆に含まれている、ビシンとコンビシンと言う2種類の糖物質は過酸化水素の活性酸素を作り出します

 

そら豆中毒症の人はG6PDが少ないので、活性酸素から赤血球を守ることができず、破壊されてしまいます。

 

G6PDを作る遺伝子はX染色体上にあるため、男性の方が発症しやすい(男性:XY 女性XX)

 

女性の場合、2つのX染色体の片方に異常があったとしても、もう一方が正常な指示を出している限り、G6PDは一定量作られます。

 

人類は数千年にわたってそら豆を栽培してきました。

 

最も古いものだと、ナザレ(イスラエル)近くの遺跡から見つかった8500年前のものです。

 

あなたは小麦、大麦、そら豆、ひら豆、きび、裸麦を取って、一つの器に入れ、パンを作りなさい。あなたが脇を下にして横たわっている日数、つまり三百九十日間、それを食べなさい。
(エゼキエル4:9)

新約聖書より

 

そら豆はこのナザレ中東全域に広がり、北上して地中海東部のトルコ、ギリシャ、南イタリア、シチリア島などに広がっていったようです。

 

そして、そら豆中毒症の患者の多い地域と照らし合わせてみると、そら豆の栽培が盛んな地域が重なります

 

ということは、遺伝的に見て何か利益があってこのような病気を集団で保持しなければならない事情があったと考えられます。

 

 

野菜も毒を持っている

では、どのような事情があってG6PDを欠損させるような遺伝子を獲得したのかを考える前に、進化について少しお話していきます。

 

果物の中には種子があり、その目的は“種を絶やさないこと”、つまり“種を継続させる”ことです。

 

そのために、甘い果実をつけ、動物に食べさせ、動物の排泄行為に伴い種子を播きます。

 

植物は、自分で移動することができないため、このようなシステムを利用して、自分の分身を遠くへと運び、子孫を増やします

 

熟していない実が硬いのは、中の種が十分に準備できていないからであり、準備が整うと、摘み取りやすく、また、落ちやすくなります。

 

しかし、食べてもらいたいのは実の部分だけであり、葉や根を食べられるのは、生きていく上で困ります。

 

そこで、食べられないように対策をします。

 

例えば、棘。

 

これを口にしたら怪我をするのは明白です。

 

それ以外では、サツマイモ、クローバー、大豆などはフィトエストロゲンという化合物で対策をします。

 

これは、人の性ホルモン「エストロゲン」によく似た作用をします。

 

エストロゲンは女性ホルモンです。

 

大豆製品を摂り過ぎると、女性の生殖機能にエラーが起きるのはこれが原因です。

 

ダイエット中に豆乳を飲む女性が多いのですが、このあたりのリスクも知っておかないと大変なことになってしまいます。

 

1940年代、オーストリアで「羊の繁殖がうまくいかなかった」という事件が発生しました。

 

不妊や妊娠したとしても流産してしまったそうです。

 

その原因は餌にクローバーを食べていたことです。

 

クローバーは羊に葉を食べられてことで、フィトエストロゲンを作り出し、捕食者、つまり羊の数を減らし身を守ろうとしたのです

 

タピオカはキャッサバという植物からできています。

 

このキャッサバには青酸カリの元となる物質が含まれており、火を通せば問題ありませんが、生で食べると、最悪死ぬらしいです

 

キャッサバの青酸カリ濃度は干ばつの時期に高くなり、生き延びるために捕食されないような戦略をとります。

 

インディアンベッチ(そら豆の一種)は強力な神経毒で捕食者を麻痺させます。

 

ナス科の植物には食用、食用ではないに関係なく、アルカロイドという毒を持っています。

 

アルカロイドは虫や草食動物には毒となりますが、人間の場合は加工して薬や幻覚剤として使用されています。

 

植物を調べてみると、毒を持っている植物はかなり多く、身近に口にしているものも少なくありません。

 

さくらんぼ、トマト、梅、桃、モロヘイヤ、りんご、カシューナッツ、アーモンドなども毒を含んでいます。※致死量に至るまで食べるのは不可能に近いので普通に食べるぶんには問題ありません

 

唐辛子に含まれるカプサイシンも、実は化学物質が原因で口の中が熱くなったり、痺れたりします。

 

ちなみに、鳥類はこれには反応しないそうです。

 

これは、鳥の消化器が種子を壊さないことに関係しています(哺乳類は壊す)。

 

壊さないから種子をまいてもらえる。

 

だから反応しない…

 

以前読んだ本によると、がんによる死亡の20%はこの植物性の、天然の毒素が原因だと試算しているそうです。

 

カプサイシンも食べすぎれば癌になるので、ある意味当然なのかもしれません。

 

では、ヒトはその毒性に対しどのように適応してきたのでしょうか?

 

その答えは、“苦味”の獲得です。

 

ロンドン大学などの研究によると、人間が苦味を獲得したのは植物の毒を感知して食べないようにするためだったと発表しています。

 

  1. Sorazon, B. Bufe,P. C. Sabeti, et al.2005. Positive selection on a high-sensitivity allele of the human bitter-tasters receptor TAS2R16

 

さて、このように毒素を持つ植物を食べて人間は種をつなぎ、毒素とうまく付き合うことで繁栄させてきました。

 

ジャガイモには葉枯れ病から身を守るためにソラニンを合成することで、原因となるカビを殺します。

 

人が食べた場合は、痺れや幻覚、黄疸が現れ最悪死をもたらします。

 

1960年に葉枯れ病に強いジャガイモを品種改良の結果作り出すことに成功しました。

 

しかし、致死量に近いソラニンを含んでいたため、市場からはすぐに消えてしまったそうです(調べてみましたが、詳細はわからず…)

 

このことは、有機野菜、無農薬野菜が必ずしも体にいいとは限らないことを示唆しています。

 

セロリを例に考えてみます。

 

セロリはソラレンを作って身を守っています。

 

ソラレンはDNAや組織を傷つける毒で、人間の皮膚に影響を与えます。

 

紫外線を浴びると、活性化し普段よりも多く紫外線を吸収し体に害を与えます。

 

Ljunggren. 1990. Severe phototoxic burn following celery ingestion. Arch Dermatol 126

 

セロリの特徴は自分が攻撃されていると感じると、ソラニンを急ピッチで大量生産します。

茎に傷が入っているセロリは無傷のセロリに比べ100倍多くソラニンを含んでいるそうです。

 

農薬を使うことで別の問題は発生しますが、完全無農薬だからといって安心、安全という訳でない、と言うことを知っておきましょう。

 

植物もただじっと食べられるのを待っている訳ではありません。

 

他にソラニンを含んでいる植物は以下のものがあります。

 

・柑橘類

・きゅうり

・パクチー

・コリアンダー

・しそ

 

これらを食べ過ぎた場合や、完全無農薬で育ったものを食べた場合は紫外線に浴びるのは控えた方がいいかもしれません。

 

 

またまたそら豆

だいぶ話がそれましたが、そら豆中毒症に話を戻します。

 

ではなぜ、G6PDを欠損させるように環境適応したのでしょうか?

 

その原因は、マラリアです。

 

G6PD遺伝子のアフリカ変異型を持つ子供はそうでない子供に比べ、熱帯熱マラリアに2倍の耐性があることがわかっています

 

G6PDを欠損している赤血球はマラリア原虫が好まないこともリサーチの結果報告されています。

 

これは、G6PDが欠損している赤血球の中では、原虫の繁殖サイクルが乱れてしまうからだそうです。

 

そら豆には抗マラリア薬に似た成分が入っています。

 

また、そら豆を食べることによってマラリアに対して二重に耐性をつけられることが当時の人々には経験的にわかっていたのではないでしょうか。

 

その結果、これらの地域でそら豆の栽培が必然的に盛んになっていったのだと思います。

 

このように、食と人の環境適応には何らかの因果関係があります。

 

戦後急速に食の欧米化が進んでいますが、体の中はそんな短期間では適応できません。

 

入れ替わっていたとしてもせいぜい、3世代か4世代くらいでしょう。

 

その結果が現代の日本人を悩ませる、肥満、糖尿病、高血圧、癌などを引き起こしていると思います。

 

 

 

今回の記事は「迷惑な遺伝子」を元に加筆して書いています。

 

 

 

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